top of page

SPECIAL INTERVIEW

Ryo Inoue

ゴースト.jpg

2023.05.08 mon.
Interview:Eisuke Koyasu
Photo:Ryo Inoue、Ayako

2019年、 20年間勤めてきた仕事に別れを告げ、 フォトグラファーとして活動を始めました。

レーサー、バンドマンと仕事をしながら

夢を追いかけてきた自分が、 フリーランスという選択をしてまでのめり込んだ写真の道。

生きることへの自問、 そして生きる喜び。

220824-ry-0S5A2021.jpg

憧れるものにはとことんハマるー
それが全ての原動力

小さい頃からレーサーに憧れていて、小学生時代はスーパーカー消しゴムで遊び、中学、高校時代には漫画や雑誌の影響でさらにモータースポーツにハマっていきました。大学進学も自動車部があるという理由で選択(笑)。在学中は部活でオフロードのサーキットレースに本気で取り組み、卒業後も、自分の車は自分で整備しながらレースを続けるために、自動車整備士として町工場に就職。「クルマ・メシ・スイミン以外は無駄」というくらいにのめり込んで、その甲斐あって一度は千葉県チャンピオンにも輝きました。ただ、レース参戦はもちろん、事故も多く修理にかかる費用も嵩み、2002年にはレーサーへの夢は諦めることにしました。

その後ハマったのがギターで、会社の先輩が所属するバンドのライブを観て「カッコいいー!」と感化されたのがきっかけでした。2006年にバンドを結成して10年ほど活動していたのですが、その次にハマったのが写真ということになります。

現在の妻との出会いは、カメラとの出会い。

実際カメラに触れるようになったのは、20年ほど前、自動車整備士だった頃に妻に出会い、彼女の持っていたカメラで、彼女とその子どもたちを撮るように なったのがきっかけでした。

4d7048_ccc62bd7273045e0a1bce04322e1d6b3~mv2.jpg

まだ小さかった息子さん娘さんと一緒に遊びに出かけ、何気ない彼らとの景色をカメラに収めるー。気づけば、彼女のカメラは僕のカバンの中が定位置になり、彼女と子どもたちを撮ることが趣味になっていました。 そんな日々が5年過ぎ、僕に「夫」と「父親」という肩書きが加わることになります。不思議なほど自然と懐いてくれた子どもたちと家族になることに、何の違和感もありませんでした。妻や子どもたちのキラキラした瞬間に、心が触れるままシャッターを切る日々が始まりました。

4d7048_e530f53f93b04fb88f8c6ae06d18a092~mv2.jpg

初個展「牛乳と野菜ジュース」(2018)

これまで諦めてきた夢の分、
写真集への想いが強くなる。

写真への興味が一気に加速したのは、InstagramやFlickrで、プロアマ問わず多くの写真家の作品を目にするようになったからですね。「こんな色、こんな構図で撮れるようになりたい」というものが自分の中にも芽生えてきて、特に濱田英明さんの家族写真に魅せられた僕は、トークライブにも足を運ぶほど大ファンに。 彼の愛用するフィルムカメラ「PENTAX67」まで購入し、気づけばデジタルにはないフィルムの風合いに引き込まれていました。フィルムで撮影した写真をSNSで写真を発信し始めたのもこの頃です。

4d7048_0dc05c4801bd4fdb8cd1c15625435fcd~mv2.jpg

趣味のカメラマンから、
一念発起して本格的なフォトグラファーへ転身。

そして2015年、「NADAR」で行われたグループ展「一期一会」で初めての展示を経験。2017年には写真専門ギャラリー「NADAR」が開催する、個展開催が賞品の「めざせ個展」でグランプリを獲得し、翌年に初個展「牛乳と野菜ジュース」を開催。テーマは「牛乳ばかり飲む息子と野菜ジュースを愛する娘、それらを毎日欠かさない妻」。当時の僕は、家族との眩い時間を作品にすることに夢中でした。撮るだけでなく、写真の選定やプリントなど何もかもが楽しくて、次は写真集を作ってみたいという夢が膨らんできたのもこの頃でした。レーサー、バンドと追いかけてきたけど叶わなかった想いの分も相まって、今度こそはという気持ちが強かったような気がします。
 

初めての個展に向けて胸躍らせている頃、たまたま入ったショップの店長さんと写真の話になり、アートディレクターの清水さん(現Space Utility TOKYO店長)を紹介されました。これまでの作品を見た清水さんが、まだほとんど趣味程度で撮っていた僕に、いきなり仕事として撮影の依頼をしてくれたのはびっくりしました。突然のフォトグラファーデビュー!

仕事で場数を踏んで圧倒的なカット数を撮るようになると、技術面でも向上してきます。それと同時に、自分が表現したいものも以前より明確になってきて、家族以外の写真や作品撮りでも、撮った瞬間に手応えを感じられるようにもなってきました。ただ、それまで理解のある会社のお陰で平日に有給を取って撮影の仕事をこなしていたのですが、さすがに回数が多くなってくると難色を示されるように……。さてどうしようか……というところで、僕は迷うことなく写真の道へ進みたいということを妻に告げました。もっと自分が見ている世界を、自分の表現で写真に落とし込みたい。そんな気持ちがいつのまにか大きくなってきていました。 もちろん、会社員と違い不安定な職業への転職ということもあり、妻は簡単には首を縦に振ってくれませんでしたが、半年近くの家族会議を経て、ついにフリーランスのフォトグラファーとなりました。それが4年前の2019年のこと。

4d7048_c09b000d5bd1400ebcdac97aafbbb480~mv2.jpg

個展「HOTEL SAN DIEGO」(2019)

妹の死を境に、
ファインダーを通して見る世界に変化。

独立後は、子どもたちも成人して以前ほど家族写真を撮ることが減ったこともあり、自分自身と向き合うようにシャッターを切る機会が増えていきました。その分「写真家としての作家性を打ち出した写真集にしたい」という気持ちが段々と高まっていました。そんな折、妹の訃報が、不意に僕の元に届きます。うつ病からの自死でした。

3つ下の妹。父親ゆずりの頑固さで、自分に人一倍厳しい妹。責任感が強くて、頑張り屋な妹。その妹がふっといなくなったことが僕の中の何かを変え、それを境に写真もモチーフも明らかに変わっていきました。一体、自分に何が起きたのかはまだ整理がつかないけど、今のありのままの心を一冊にまとめることで、より深く自分を見つめられるのでは、と考えるようになってきています。

4d7048_4af36b73fea04deba5ff1fa910bf6aae~mv2.jpg

もがいてきた4年間を、
新たなステージへの足がかりとして残したい。

僕にとって写真は、自分を表現し、残すこと。できるだけ頭で考えず、体が反応した瞬間を捕まえるように撮っています。この4年間の僕を写真集という形にして残すことで、次へと進みたい。一枚一枚の写真をセレクトし、並べて鑑賞してみると、その思いがより一層強くなります。振り返ると、すべての写真に自分自身がさらけ出されているように思えます。

230508-ry-0S5A7527.jpg

「光とは、何だろう。死は光を失うことなのか。生命や愛や家族との幸福の瞬間が光なら、陰は終わりのある儚さの象徴なのだろうか」そんな自問自答する僕の心が見えてきます。

でも、実際に写っているのは、どれも日常の中にある光景ばかりです。それはきっと僕だけでなく、皆さんのそばにもあるようなものたち。だから、そこになにを感じるのかということを大切に残してもらえたらうれしいです。プリントについても自分が表現したい色やトーンになるよう、暗室で何度も試行錯誤を重ねて「これだ」と思えるように仕上げてきました。井上亮という写真家を、そして僕の写真を通して、僕がどう自分に向き合っているのかを知って欲しいからー。 コロナ禍の影響も少なからずあり、まだ生活の全てを写真に注げられる状態には届いていなくて、4年間やってきたけれどまだまだチャレンジの日々だなとは感じています。40代も折り返した今、後半に向けてを打って、ここからまたスタートする心持ちで写真集の制作に取り組みたいと思っています。ぜひ皆さんの元にも、この決意を形として届けていきたいと思いますので、ご協力よろしくお願いします。

IMG_8684_JPG.jpg

井上亮

写真家

1977年新潟県生まれ。東京都在住。 20年間カーメカニックとして働いてきたが、2019年よりフリーランスフォトグラファーとして活動を開始。独自の視点で撮影する家族写真を基盤にしながら、保育園・幼稚園・大学の学校案内、アーティストのポートレート・プロフィール撮影、ファッションブランドのモデル撮影、イベントやワークショップの撮影、取材同行撮影などで活動。

  • Instagram
waku.png

井上亮 写真集クラファンプロジェクト

とこしえの光に包まれたすべて

初めまして、2019年からフリーランスのフォトグラファーとして活動している井上亮です。

現在46才、妻と息子と娘の4人家族です。僕がカメラを始めたのは、ほんの10年前。

今の妻と出会った頃に趣味として撮りだしたのがきっかけでしたー

221011-ry-DSC01649.jpg

2023.8.1 tue.START

井上亮クラファン.jpg
cf_logo_padded.png

【新型コロナウイルス感染症対策として】

入場はマスク着用とさせていただき、入店時には手指のアルコール消毒をお願いしております。また『緊急事態宣言』発令中につきましては、同時に入店4名様までと人数の規制をさせていただきます。ほかSUT『感染対策』のガイドラインをご覧ください。

bottom of page